スコッチ蒸留所(O~Z)scotch_distillery_OtoZ


                        

蒸留所紹介(O)

・オーバン OBAN 地域:ハイランド
オーバン蒸留所は、ハイランド西側のリゾート地のオーバンに存在し、オーバンはゲール語で「小さな湾」を意味しています。
スコットランドでは5番目に古い蒸留所と言われており、スティーブンソン兄弟は1793年にビールを造り、翌年1794年にウイスキーの蒸留を行ったという記録がある為、1794年創業とされています。
19世紀以前、町にはほとんど家が無く、わずかな規模の漁業、貿易、造船、採石業が行われ、観光客はほとんどいませんでしたが、オーバン蒸留所を中心に発展していき、1880年代に鉄道が開通し、地域の産業が活性化され、観光業など新しい産業で町は栄えていくという地域の歴史と共にある蒸留所になっています。
オーバン蒸溜所のポットスチルは、初溜、再溜合わせて2基しかなく、スコットランドで最も小さい部類に入るランタン型のポットスチルにより手間と時間をかけ蒸留されたモルトは、その立地の通りハイランドとアイランズの特長を併せ持つ個性的なモルトとなっています。
1979年にいち早くシングルモルトのカテゴリーに参入していますが、生産量は年間にして87万Lと少量で、以前はブレンデッドモルトにも使用されましたが現在は生産量の大部分がシングルモルトとして出荷されています。
また、ユナイテッド・ディスティラーズ(UD社)が提唱した地方ごとの代表的なシングルモルト銘柄を取り上げるクラシックシングルモルトのシリーズでは、オーバン蒸留所が西ハイランド代表として知らており、柑橘系の爽やかさとモルト、フローラルさ、スモーキー、塩辛さ(ブリニー)も感じられ、特にアメリカに根強いファンがいます。

蒸留所紹介(R)

・ロイヤルブラックラ ROYAL BRACKLA 地域:ハイランド
ロイヤルブラックラは、ロイヤルと言う名の通り、英国王室御用達のウイスキーです。
ブラックラについては、地名からきており、アナグマの繁殖地と言う意味だそうです。
創業は1812年(1817年説有り)と古く、ウイリアム・フレージャー英軍大尉がビール工場の跡地に設立したと言われており、当時はブラックラ蒸留所と言う名前でした。
ブレンデッドウイスキーの「デュワーズ」のキーモルトとして知られており、蒸留所はデュワーズ社の近くにあります。
創業後の1833年、ウイスキーとしては初めてロイヤルワラント(王室御用達)を与えられ、「王のためのウイスキー」とも呼ばれています。
現在、製品にロイヤルと名がつくのは、ロイヤルブラックラ、ロイヤルロッホナガーの2つだけと希少で、1985年以前はグレンユーリーロイヤルがありましたが閉鎖してしまいました。
蒸留所の年間生産量は410万リットルと規模は大きい方でありながら、 オロロソやペドロヒメネスなどの、ファーストフィルのシェリー樽でのフィニッシュに拘りがあります。
基本的な香りはフレッシュかつフローラル、 味わいはフルーティで少しオイリーなのが特徴です。
2016年より日本でも12年、18年、21年が購入できます。

蒸留所紹介(S)

・スペイバーン SPEYBURN 地域:スペイサイド
スペイバーンは、バーンがゲール語で「川」を意味する為、スペイ川と言う意味になります。
創業されたのは1897年で、ヴィクトリア女王の在位60年の年でした。
この年に記念ボトルができるように蒸留所の職員たちは12月の吹きすさぶ嵐のなかで悪戦苦闘しながら業務を行い、その結果バット1本分のスピリッツを蒸留し、ボトリングする事が出来たという逸話があります。
スペイバーン蒸溜所を設計したのはチャールズ・ドイグですが、特徴的なキルン(窯の煙突)のデザインが有名でこのキルンの先端構造は、かつてドイグ式換気装置と呼ばれていました。
スペイバーンでも同様の換気装置を設置し、更にハイランドでは初となる圧縮空気を利用したドラム式製麦機(ニューマチック式)を導入し1968年まで使用されました
ブレンデッドウイスキーに用いられることが多く、シングルモルトしてはまだまだ認知されていない銘柄ですが、 味わいは柑橘系の爽やかさにスペイサイド特有の華やかなフローラルの風味も感じられ、モルトの穀物感もある複雑な味わいですが非常にさっぱりとしています。
スペイ川には多くのサーモンが生息しており、ブランドロゴにもサーモンが描かれています。

・ストラスアイラ STRATHISLA 地域:スペイサイド
ストラスアイラは蒸溜所のそばを流れる川がアイラ川であり、ゲール語で「アイラ川流域の広い谷」を意味します。
創業は1786年で、当時は「ミルタウン」(工場の街の意味)と名乗っており、スペイサイドでは一番古くスコットランドではグレンタレット、ボウモアに次ぐ3番目の蒸留所となっています。
当時から立地よりストラスアイラと呼ばれており、1870年に正式に名称が変更になりましたが、その後またミルタウンに名称が変更し、1951年に再度ストラスアイラになりました。
ブレンデッドモルトの「シーバスリーガル」のキーモルトとして知られており、原酒の99%はブレンド用に使用されています。
シングルモルトとしては希少で、オフィシャルボトルの「ストラスアイラ12年」も2019年に終売していますが、 ボトラーズ会社であるゴードン&マクファイルからのリリースが少量あります。
味わいはフローラルで華やか、コクがあり、リンゴの様な香りでフルーティな印象で、熟成年数が長い方がその柔らかなハウススタイルが味わえます。

蒸留所紹介(T)

・タムデュー TAMDHU 地域:スペイサイド
タムデュー蒸溜所は、スペイサイド地方のスペイ川中流にあるノッカンドゥ村にあり、ゲール語で、「小さな暗い丘」を意味しています。
創業は1897年で、ハイランド・ディスティラーズの取締役であり、エルジン銀行の取締役でもあったウィリアム・グラントが率いるブレンダーのグループによって建設され、蒸留所建設で有名な建設家のチャールズ・ドイグが設計を担当しました。
鉄道網が発達した地域で、当時非常に効率的にデザインされたと言われておりますが、設立後2年でハイランド蒸留所に売却され、長らくブレンデッドウイスキー用の原酒のを造る蒸留所として稼働していました。
自社で製麦(サラディンボックスでの乾燥とモルティング)を行うという近代では数少ない蒸留所でしたが、その後も閉鎖と再開を繰り返し、2011年にはイアンマクラウド蒸留所に売却され、その自社製麦も他社製に切り替わることになっています。
熟成に使用する樽は設立当初から主にシェリー樽を使用しており、鉄道を利用してスペインから上質なシェリー樽を輸入していました。
現在のオフィシャルの12年熟成品は、ファーストフィルとリフィル、そしてアメリカンオークとヨーロピアンオーク、さまざまオロロソシェリー樽を用意してブレンドした100%シェリー樽原酒となっています。
香りはリッチで魅惑的でオレンジやレーズンに微かなミントの香り、味わいはベリー、モルティーでシェリー樽の深みスパイシーさそして最後に微かなピートスモークが現れます。
高品質なシェリー樽熟成の原酒を造り続ける、貴重な蒸留所となっています。

・タムナヴーリン TAMNAVULIN 地域:スペイサイド
タムナヴーリンはゲール語で「丘の上の水車」という意味で、製粉用の水車小屋が丘の上にある事が由来となっています。
創業は1966年で比較的新しいですが、正式名称はタムナヴーリン・グレンリベットと言い、1800年代後半にジョージスミスのグレンリベットの名声にあやかる為に多くの蒸留所がグレンリベットを名乗りましたが、あえてグレンリベットとつけたのは、正真正銘リベット川のほとりに建つからだそうです。
ブレンデッドウイスキーの「ホワイト&マッカイ」のキーモルトとしても知られていますが、2016年からシングルモルトもリリースしており、その味わいはスペイサイドで一番軽いと言われるほどすっきりとして、様々な飲み方で楽しめます。
また、様々なカスク(樽)での熟成、フィニッシュにチャレンジしており、色々なリリースがありますが、どれもコストパフォーマンスに優れた一本となっています

・ティーニニック TEANINICH 地域:ハイランド
ティーニニック蒸留所は、北ハイランドに位置している蒸留所で、名前は地名から来ており、意味はゲール語で「荒野の中に建つ家」です。
蒸留所の東側はダルモア蒸留所があり、すぐ近くにあるティーニニック城は現在はホテルになっています。
南側のクロマティ湾は、ネズミイルカの生息地として知られており、唯一のオフィシャルボトルである「花と動物シリーズ」のラベルにイルカが描かれています。
創業は1817年と古く、キャプテン・ヒューゴ・マンローが自分の領地に建設しました。
創業当時は密造所として稼働していましたが、酒税法の改正にマンローは注力し、1823年に改正されてからどんどん生産量を増やしていきました。
1933年にDCL社(Distillers Company Limited:ディアジオ社の前身)が買収し、その後1970年に古い蒸留所の隣に新しい蒸留所を建設しました。
新しい蒸留所Aサイドと呼ばれ、6基の蒸留器が設置され、古い蒸留所はBサイドと呼ばれて4基の蒸留器があり、1999年まで生産を続けました。
その後、2015年に大幅な拡張工事が行われ、蒸留器の数は12基となり、生産能力も1020万リットルとディアジオの持つ蒸留所としてはローズアイル、グレンオードに次ぐ3番目に大きい蒸留所となっています。
ジョニーウォーカーのキーモルトとして知られており、そのほとんどはブレンデッド用の原酒として生産されます。
蒸留所の特徴としては、通常のローラーミルとマッシュタンではなく、ハンマーミルと糖化タンクには伝統的なマッシュタンでなく、マッシュフィルターを使っている事で、これは大麦麦芽以外の穀物にも対応できるようにするためと言われていて、スコッチでは他に2016年稼働のインチディアニー蒸留所が導入している様な最新設備です。
この様に、最新のテクノロジーを導入するなど、ディアジオの中では生産の一大拠点であるとともに、実験的な蒸留所となっています。
風味はリンゴのようなフレッシュで酸味のある果実の甘い香りがあり、味わいはビターさを含む複雑な味わいが特徴です。
生産のほとんどがブレンデッド用に使用され、オフィシャルでは前述の花と動物シリーズや一部スペシャルリリースだけで、ほんの一部がボトラーズから発売されています。

・ザ・グレンリベット THE・GLENLIVET 地域:スペイサイド
グレンリベットはゲール語で「静かなる谷」という意味で静寂なリベット渓谷にあります。
密造が盛んだった地域にあった蒸留所はジョージ・スミスによって1824年にスコットランドで最初に蒸留ライセンスを取得した蒸留所となりました。
密造者に裏切者と称されたスミス氏は命を狙われる事となり、身を守るために2丁の拳銃を携帯していた事は有名な話です。(発砲したのは1度だけ、泥棒を追い払うために暖炉に向かってと言われています。
密造酒時代からその味わい、品質の高さは有名で、政府公認後はその名声にあやかろうと他の蒸留所が「グレンリベット」の名前を自分たちのウイスキーの名前に使用するようになり、味わいまで模倣する者が現れました。
ジョージ・スミスは自分達のウイスキーを守るために裁判所に提訴し、長い年月を要した末、1884年に息子のジョン・ゴードン・スミスの時代についに判決が下りました。
結果はジョージ・スミスの造るグレンリベットだけが本物の証拠である"THE"をつけることが認められ、唯一無二の本物の"THE GLENLIVET"となりました。
ライセンス第一号である唯一無二の「始まりのウイスキー」と呼ばれていますが、味わいはフルーティかつソフトで、誕生当初は、当時の他の重厚なハイランドモルトとは全く異なるスタイルでした。
現在の生産能力は年間約2,100万リットルで、スコットランド最大のシングルモルト生産者の1つです。
初めて飲むシングルモルトとして、そして最後に飲むシングルモルトとしても飽きの来ない味わいです。

・ザ・マッカラン THE・MACALLAN 地域:スペイサイド
マッカランはゲール語で豊な土地を意味する「Magh」とアイルランド人の牧師である聖フィランを意味する「Ellan」の2単語を組み合わせています。
ザ・マッカラン蒸留所はスペイサイドで最初に設立された蒸留所の一つと言われ、農業が行われていない冬の間に余った大麦を使うために作られ、正式には1824年にザ・グレンリベットに次ぎ創業しました。
日本でも有名な蒸留所の1つで、世界的にも評価が高く「シングルモルトのロールスロイス」と絶賛されています。
スペイサイドで最小の蒸留器を使っており、シェリー樽熟成にこだわりを持っているのが特徴的で、なめらかでクリーミーな口当たりとフルーティーかつスパイシーな風味を持ち合わせています。

・トバモリー TOBERMORY 地域:アイランズ
トバモリー蒸溜所はマル島と言う、スコットランドの西海岸にあるヘブリディーズ諸島の内側(インナーヘブリディーズ)では2番目に大きい島にあり、スカイ島とジュラ島のちょうど中間に位置します。
蒸溜所はトバモリー町の漁港に建てられており、港の開発の一部に蒸留所建設があったと言われています。
トバモリーはゲール語で「メアリーの井戸」をと言う意味で、メアリーとは聖母マリアの事だと考えられています。
ビール蒸留所として1798年に建てられ、ウイスキーの蒸留も行っていたと言われており、創業当時はレダイグ蒸留所と言う名前でした。ちなみにレダイグはゲール語で「安全な港」を意味しています。
実際の創業は1823年とも言われており、その後1837年に操業停止以降、操業と停止を繰り返していた為、あまり稼働していない状況でしたが、1993年にBurn Stewart Distillers社に買収されてから、徐々にブランドが成長し、2017年に改修工事を経て年間生産量が100万リットルを超える蒸留所となりました。
ウイスキー造りは独特で、2種類のウイスキーを作っており、まず、ノンピートタイプのトバモリーの方は麦芽自体にはピートをつけず、ライトな味わい、仕込み水由来のピーティーさかすかに持っています。
一方、ヘビリーピーテッドタイプのレダイグは、古いスタイル6か月間だけ作られ、麦芽にもピートを染み込ませているのでよりピーティーで個性的な味と言えます。
製造比率はレダイグが55%と多く、同じ施設でノンピートとピートタイプのがどう違うのか、それを知る事ができる蒸留所になっています。

蒸留所紹介(W)

・ウルフバーン WOLFBURN 地域:ハイランド
ウルフバーンはハイランド北側にあるサーソと言う街にあり、現在イギリス本土最北端にある蒸留所となっています。
大麦の生産に適した地域で、ウルフバーン川の河畔には良質な泥炭(ピート)層が広がるなど、ウイスキーの生産にうってつけな場所です。
名前の由来は、近くを流れる仕込み水であるアッパーオームリーの泉の源流であるウルフバーン川に由来し、ウルフバーンはゲール語で「狼のいる小川」と言う意味で一帯に狼が生息していたと言われています。
蒸留所の歴史としては、1821年に同名の蒸留所の原型である蒸留所が開設し、1820年代には大きな生産量を誇っていましたが、1837年に閉鎖され、その後再開されますが1860年代に完全に閉鎖されてしまいます。
それから約150年の年月が経ち、現オーナーであるスコットランド育ちので元軍人であり、起業家という異色の経歴であるアンドリュー・トンプソン氏を中心として、ウルフバーン蒸留所のゼロからの再建プロジェクトが発足しました。
そして生産責任者に「グレンファークラス」で20年以上にわたって生産マネージャーを務めていたフレイザー氏を迎え、ついに2013年、かつてと同じくソーサの町に新しくウルフバーン蒸留所が建設されました。
かつてのウルフバーン蒸留所がそうであったように、昔ながらの手作業と伝統を重んじて、「可能な限り人の手で」と言うコンセプトがあり、蒸溜所開設時に、大手ウイスキーメーカーから原酒の提供を求められましたが、それらを断り、小さいながら頑なにシングルモルトを生産するこだわりを持っています。
味わいの目標は、フルーティーで甘い、「スペイサイドスタイル」としており、基本的な酒質は青リンゴ感のある、すっきりとした酒質になっています。
熟成樽のチャレンジも豊富で、オロロソシェリーシェリー樽やアイラ島のラフロイグを熟成した樽を使用したりと、ラインナップもピート感のあるものからシェリー系まで幅広くリリースしています。
2023年には待望の10年熟成品が販売されて人気となっておりますが、完成度の高く、新しい蒸留所ではありますが、世界のモルトファンを虜にするウイスキーとして人気を博しています。