スコッチ蒸留所紹介A~Gscotch_distillery_AtoG
蒸留所紹介(A)
アベラワー蒸留所はスペイサイドのほぼ中央、ベンリネス山を源流とするアベラワーと言う地域のアベラワー川沿いにあります。
アベラワーとはゲール語で「せせらぐ小川の川口(オフィシャルサイトより)」を意味し、スペイサイド地方の象徴であるスペイ川へアベラワー川が流れる河口にある地域で、水が豊富な事を表していると言われています
本来の創業は1826年であり、ジェームズ・ゴードンとピーター・ウェアによって建てられました。
不運な事に火災が発生してしまい、1879年に有名な建築家のドイグが設計し再建されています。
再建に貢献した、ジェームス・フレミングは町の発展に大きく貢献した事もあり、公式には創業年を1897年としています。
その後、ペルノリカール社に買収され現在に至りますが、同社のブレンデッドウイスキー「シーバスリーガル」のキーモルトとして供給されています。
一方で、同社のもつ、ザ・グレンリベットと並んでシングルモルトにも力を入れており、ベンリネス山からの豊富な軟水と厳選されたシェリー樽とバーボン樽の2種類の樽を使って熟成するダブルカスクマチュレーションを特徴としたウイスキー作りを行っています。その基本的な酒質は、スペイサイド特有の癖がなく、すっきりとした味わいでリンゴやマスカットの様な爽やかさに、シェリー樽由来のタンニン、スパイシーさ、そして甘さが加わり非常にバランスの良いウイスキーになっています。
元々フランスで人気がありましたが、最近では世界的にその美味しさが知られ、シングルモルトとして現在トップ10の売り上げになっています。
・アラン Arran 地域:アイランズ
アラン(アイル・オブ・アラン)蒸留所は2019年にロックランザ蒸留所に名称が変更になりました。
ロックランザ蒸留所はこちら。
創業は1815年(1794年説あり)で、アイラ島ではラフロイグと同じ年に創業されボウモアに次いで2(または3)番目に古い蒸留所となっています。
操業停止など様々な歴史を経て、現在では世界にアードベギャンと呼ばれる熱狂的なファンがいる程に人気の蒸留所です。
酒質はアイラ島の中でも一二を争う程ピートが効きスモーキーですが、柑橘系の香もありフルーティな面も併せ持ちます。
蒸留所は非常にチャレンジングで、ウイスキー造りに対し様々な取り組みを行っています。
オフィシャル品でも様々なタイプがあり、定番品として若い5年、スタンダードの10年から超熟タイプも限定で発売されています。
ボトラーズリリースは多くは無く、リリースされても蒸留所の名前が付いていないことが多いです。
ボトルのシリーズ名も面白いですし、スコッチウイスキーを語る上でなくてはならない存在です。
また、年に一度アードベッグデーと呼ばれるイベントが日本でも開催されており、賑わっています。
場所はハイランドの東部に位置し、スペイサイドの境界線にある為、スペイサイドウイスキーと言われることもありますが、蒸溜所の職人たちは「ここはハイランドであり、ハイランドモルトだ」と言っているそうです。
創業は1898年で、ウィリアム・ティーチャーの息子アダムによって、自らのブレンデッドウイスキー「ティーチャーズ・ハイランドクリーム」のキーモルトを製造する為に設立されました。
かつてはシングルモルト市場にあまり流通しておらず、希少なウイスキーでしたが、近年はシングルモルトのオフィシャルリリースもあります。
アイラ島の「ラフロイグ蒸留所」と姉妹蒸留所として知られており、その味わいも内陸系ピートと言われる様に、アイラ島以外としては珍しくピーティですが、ヨード感は抑えめの上品なスモーキーさです。
蒸溜所の守り神である鷲(わし)は「アードモア レガシー」のラベルにその姿が描かれています。
名前の由来は半島の名前から来ておりますが、現地の発音では「アードナマッハン」や「アードナマーハン」が正しい様です。
ゲール語に由来するスペリングは読みにくく、発音も日本人には馴染みのないものが多いので、中々覚えられないですが、この名前はなんとなく頭に残ってしまいます。
2014年に皇室の妃殿下の立ち合いのもと公式オープンされており、蒸留所を立ち上げたのは、インディペンデントボトラー(独自瓶詰業者)の老舗アデルフィ社です。
近年ボトラーズ会社が蒸留所を所有する方向にシフトしている事の先駆け的存在かもしれませんが、実はアデルフィ社は1800年代の創業時にアデルフィ蒸留所を持っていました(現在は閉鎖)。
製造には全て地元で採れたものを採用しており、ノンチルフィルター(冷却ろ過なし)&ナチュラルカラー(無着色)に拘り、樽にはバーボン、オロロソシェリーを使用、ノンピートとピートタイプを製造、ブレンドしてシングルモルトをリリースしています。
基本的な香りはフルーツやユーカリ、味はスパイシーながら甘味もありバランスが良いです。
通常品は比較的手に入りやすくなっておりますが、今後のラインナップに期待が持てる蒸留所です。
オスロスクは意味する言葉が見つからず、一部「赤い流れを渡る浅瀬」と言う解釈がありますが、いまいちしっくりこないです。
そして、AUCHROISKと言うスペリングが恐ろしく読みにくく、恐らくスコッチでトップクラスに読めない蒸留所だ思います。
創業は1974年と比較的新しく、1978年にはシングルモルトをリリースしていましたが、前述の通りスペリングが読み難い 事が要因で、「ザ・シングルトン」と言う名前で90年代まで販売されていました。
その後、UD社の「花と動物シリーズ」において、オスロスク10年がリリースされていますが、2008年に「ザ・シングルトンオブオスロスク」と言う名前で販売され、現在ではまた「花と動物シリーズ」からリリースされています。
ちなみに現在も「ザ・シングルトン」と言う銘柄は存在しますが、販売地域ごとに中身に蒸留所が異なっており、例えばアジア向けはグレンオード蒸留所で「ザ・シングルトンオブグレンオード」となっております。
現在オスロスク蒸溜所のアルコールの年間生産は590万リットルあり、大きい規模の蒸留所ですが、ほとんどがブレンデッド用に使用され、「J&B」のキーモルトとして有名です。
現在入手できるのは「花と動物シリーズ」の10年ですが、爽やかなフルーツやりんご系の香りと麦っぽさがありながらクリアーな香り、味わいは爽やかな部分と熟したフルーツと若干ビターな味わいがありますが、飲みやすく、みんなが美味しいと思える味わいです。
ボトラーズからのリリースもそこまで多くないですが、比較的手に入りやすい銘柄だと思います。
蒸留所紹介(B)
その素晴らしい立地は2013年公開のケン・ローチ監督の映画「天使の分け前」のロケ地にもなりました。
創業は1790年とスコットランドでストラスアイラに次ぐ4番目となっており、歴史が長い蒸留所です。
長くはバランタインのキーモルトとして流通していたため、市場には出回りませんでした。
2007年よりシングルモルトのラインナップを主力に、たった8人のチームで運営されており、蒸溜設備もポットスチルが2基と非常に小規模の生産であり、ラベル貼りは手作業で行われています。
味わいはさっぱりしていて軽く、青りんごと洋ナシの風味がありフルーティ、飲みやすい味わいとなっております。
バリンダロッホ蒸留所は2014年にスペイサイドで創業した家族経営の新しい蒸溜所です。
スペイサイド地域の中央に位置するバリンダロッホ蒸留所は、バリンダロッホ城を中心とする地域名から取っており、ゲール語で「川辺の低地にある草地にある村(農地)」と言う意味を持っています。
創業者のガイ・マクファーソン・グラント氏はこの地に長く居を構えるマクファーソン・グラント家の一族で、現在はバリンダロッホ城の23代当主を務めています。
グラント氏はかねてより自らが生まれ育った地で地元の原料を使ったウイスキーづくりをしたいと考えており、自分の目が行き届くことを重点に置いた小規模の蒸溜所を設立しました。
製造工程でも、発酵時間、蒸留時間を非常に長くとっており、特筆すべきは蒸留時にポットスチルを予熱する事、またワームタブを使用しており、ワームタブを水冷する温度も管理されています。
理由は、とにかくクリアで雑味のないフルーティでフローラルな酒質を目指している為で、ワームタブでゆっくりと液化したニューポットはポタポタとスピリットセーフに流れます。
そう言った造りの拘りから年間生産量は7.5万リットルと非常に少なく、貴重なウイスキーになっています。
そして、2014年の創業以来、ウイスキーとしての熟成を重んじる信念から、製造したウイスキーをニューメイSクやノンエイジでリリースしなかったため、バリンダロッホのウイスキーはこれまで一切リリースされる事は無く、2024年にやっと少量の発売がありました。
こう言った拘りも、グラント家の資金力から来るものだと考えられますが、兎に角拘りが凄いと言った感想です。
店主はオーナーであるグラント氏の説明を受けましたが、オーナー自らがウイスキー造りを説明し、非常に情熱を持ってウイスキー造りを行っている様子が伺えました。
ゲール語でベンは「山」、ネヴィスは「水」を意味する様に山からの豊富な水がある場所です。
西ハイランドで稼働している蒸留所は現在「ベンネヴィス」と「オーバン」だけです。
創業は1825年と古く、創業者はブレンデッドスコッチ「ロング・ジョン」の基となった地元の銘家出身のジョン・マクドナルドです。
193cmの大きな身体、強靭な肉体と優しい心を持つジョンは、地元の英雄でもあり、侯爵夫人がベン・ネヴィス山で道に迷った時に鈴をひとつ持って助けに向かったと言う話が残っており、ロング・ジョンの愛称で親しまれていました。
1970年代、1980年代に一時閉鎖したこともありましたが、当時「ニッカウヰスキー」の竹鶴政孝の甥である竹鶴威氏が、 その気候と豊富な雪解け水に着目し買収を行い、現在までニッカウヰスキーの所有の蒸留所になっており、原酒は今でもニッカウヰスキーに使用されています。
ちなみに日本企業が所有するスコットランド蒸留所しては第二号(第一号はトマーティン蒸留所:宝酒造と大倉商会が買収)です。
生産能力は年間200万リットル中規模で、シングルカスクタイプや、ウッドフィニッシュタイプなどが販売されています。
主力の10年熟成品は、軽やかで爽やかな甘酸っぱさとフルーティさ、麦芽の香ばしさがあり、 口に含むと南国のフルーツのような甘さと酸味と麦の甘みが広がります。
ボトラーズリリースも多くあり、長熟で年代が古いものだとケミカル系の香りと味わいが強いものが多いです。
ベンリアック蒸留所はスペイサイドに位置し、ゲール語で「灰色の山」を意味しています。
ロングモーン蒸留所のすぐ近くにある姉妹蒸留所として知られており、その理由は、創業者のジョン・ダフがロングモーン蒸留所の設立者であり、当時のウイスキーの需要に対応して、ロングモーンと同時期に立ち上げた為です。
しかし、最初の蒸留は1898年とロングモーンから5年遅れる間にウイスキーの需要が低下し、ブレンダー大手が倒産したあおりを受け、わずか2年後の1900年に閉鎖してしまいます。
その後、半世紀以上経ってから、ザ・グレンリベット・ディスティラリー社がオーナーとなり、1966年に再開されます。
当時、スペイサイドの蒸溜所としては珍しいヘビリーピート麦芽を使用しており、シーバスリーガルなどのブレンデッドウイスキーの原酒を作っていました。
オフィシャルボトルは1994年までなく、そのウイスキーのほとんどはブレンデッドの原酒として使用されていたため、知名度が低い蒸留所でした。
その後、オーナーの変更により、シングルモルトの販売が開始され、古い原酒を含めたラインナップがリリースされると、その美味しさが評判となり、近年は数々の賞を受賞しています
製造工程でも、現在希少な「フロアモルティング」を行っており、ゆっくりとした蒸留を行う事で、ベンリアックの特徴である、フルーティで柑橘の様なすっきりとしてなめらかな飽きの来ない味わいを造り出しています。 樽に関しても古くから様々な樽を使用しており、30種以上の樽での希少な原酒が倉庫に眠っていると言われています。今でも年に1か月程度の期間、フェノール値55ppmのヘビリーピーテッド麦芽の仕込みを行っており、ノンピートタイプとピーテッドタイプが味わえる蒸留所となっています。
ゲール語でベンは山を意味する為、リネス山と言う意味になりますが、リネスの意味については赤茶色の草地等の解釈がある様です。
創業は1826年と古く、当時はLyne of Ruthrie(ライン・オブ・ルスリー)と言う名で、1834年にウィリアム・スミス&カンパニーに売却され、蒸留所名も現在の「ベンリネス」に変更されました。
その後、ジョン・デュワー&サンズ社に売却され、その3年後にDCLの傘下に入る事で現在はディアジオの所有する蒸留所になっています。
ブレンデッドウイスキーの「ジョニーウォーカー」のキーモルトであり、スペイサイドでは珍しく、ヘビーでナッティ、サルファリー(硫黄感)な酒質を追求しており、モートラックやダルユーインと合わせて「ディアジオの異端児」とも呼ばれています。
スタンダードな澄んだ麦汁でなく、濁った麦汁を抽出し、発酵も50時間と短めで乳酸発酵をさせず、蒸留も銅とのコンタクトを少なくするために、短時間で行い、蒸留の工程ではミドルカットの下限を58%と非常に低く設定しています。
また、使用する樽はほとんどがヨーロピアンオークのシェリー樽で、その酒質を受け止めています。
これらの製法がヘビーでナッティかつサルファリーな風味を造り出しており、ジョニーウォーカーのブレンダーが形容する「ミーティー(肉のような)」なフレーバーを出すために非常な重要なフレーバーになっています。
唯一のオフィシャルボトルである花と動物シリーズのボトルには、ベンリネス山に生息する黒ライチョウが描かれており、 その味わいは重厚感だけではなく、フルーティーで複雑なアロマやフレーバーも持ち合わせています。
ボトラーズリリースも少なからずあり、隠れた人気蒸留所です。
ブラドノック蒸留所は、本土ハイランド地区の最南端に位置する蒸留所で、ブラッドノックと言う集落にある蒸留所です。
ブラッドノックは、ゲール語で「平坦で低い土地」という意味で、周辺の土地が比較的海に近く平地であることを示しており、気候は比較的暖かく、蒸留所近くには貴重な野生のランが生息する森があり自然豊かな場所です。
創業は1817年と古く、マックレランド兄弟が家族経営を行い、その後1905年に閉鎖してしまいます。
その後、1911年に北アイルランドのダンヴィル社に買収されますが、その後もオーナーが変わり続け、その回数は10回を超える状況で、また閉鎖も繰り返した数奇な運命の蒸留所です。2014年の破産申告した後、現在のオーナーであるデビッド・プライアー氏に買収され、復活を果たします。
しかしながら、蒸留所の収入のほとんどはウイスキーの販売でなく、観光やイベント、貸倉庫の賃料から得ている状況の中で、生産は断続的に行われ、年間生産量は150万リットルと小規模で流通量もそれほど多くない蒸留所です。
酒質は、柔らかな印象ですが、香味、味わい共に複雑で、フローラル、プラム、乳酸、草原の様な香りから味わいもまブドウ、スパイス、バニラなど色々な味わいが重なります。
正直に言うと、癖がある方だと考えますが飲み慣れてくるとその奥深さに気づきます。
ラインナップはサムサラ、アデラ、タリアなど、意味を込められた名前となっており、近年は、ボトル、ラベルデザインが非常に洗練されています。
中々お目にかかれない蒸留所のボトルかもしれませんが、見つけたら是非購入してその味わいを体験してみては如何でしょうか。
アルダワーはゲール語で「カワウソの川」と言う意味で、仕込み水でもあるアルダワー(オルトダワー)川の名前に由来します。
創業は1798年ですが、1825年に政府の認可を受けた際に現在のブレアアソール蒸留所に変更しており、その名前は有名な貴族のアソール公爵の居城であるブレア城に由来します。
年間の生産量は290万リットルと多いですが、その99%はジョニーウォーカーやベルのブレンド用として使われ、シングルモルトとしてボトリングされるのは残りの1%であり、旧UD社の有名な「花と動物シリーズ」や、時折リリースされる限定品モルトぐらいしかないため、オフィシャルボトルは希少です。
造り方の特徴は、ブレンド用の原酒はバーボン樽で熟成させるのに対し、シングルモルト用はシェリー樽で寝かせています。
味わいは、シェリー樽由来のドライフルーツやレーズンなどの甘い果実の風味に、少しのスパイシーさが特徴です。
ちなみに「花と動物シリーズ」はその名のとおりラベルに花と動物が描かれますが、ブレアアソールに描かれる動物がカワウソであるのは、前述のオルトダワー川(カワウソの川)に由来しています。
この場所は宗教弾圧から逃れたカトリック教徒が建設した村で、蒸留所の標高は350mでとスコッチの蒸留所の中では最も高い部類であり、蒸留所に行く道は蒸留所で行き止まりとなる為、観光客も地元の人もめったに脚を踏み入れないような場所になっています。
創業は1973年と比較的新しい蒸留所であり、親会社のシーグラム社の子会社のシーバスリーガル社が当時はザ・グレンリベットにあやかる為に、ブレイズオブグレンリベットという蒸留所名でしたが、後にザ・グレンリベットを傘下に収めた為、1994年に蒸留所名をブレイヴァルに改名しました。
2001年にシーバス・リーガルがペルノリカール社に売却されたの時に閉鎖され、2008年に再開されました
比較的大規模の生産能力の蒸留所であるが、少人数で運営できるように効率化された設備で、年間400万リットル以上を生産し、その原酒のほとんどは「シーバス・リーガル」に使用されます。
基本の酒質は、モルティでバニラやビターなオレンジを感じ、熟成樽はシェリー樽熟成が多い印象ですが、使用している樽の比率は非公開の様です。
シングルモルトでのリリースは稀でオフィシャルでは2019年のスペシャルリリース、あとはボトラーズからリリースされます。
古くはブルイックラディとも表記されますが、近年は公式にブルックラディと表記されています。
創業は1881年で、ブナハーブン蒸留所と同じ年に創業しており、アイラ島では6番目(又は7番目)の蒸留所となっています。
1995年に操業停止となりましたが、2000年にボトラーのマーレイ・マクダヴィッド社を中心とした投資家のグループによって買収され、蒸溜所の責任者としてボウモア蒸留所長であった「アイラの伝説の男」ジム・マッキュワンが選任され翌2001年に蒸留を再開しました。
再開後は様々な取り組みを行っており、その中でもスコッチウイスキーとしては珍しく生産地にこだわっています。
大麦の栽培、蒸留、熟成、そして自社内でのボトリング(瓶詰め)、ラベリングから梱包まですべて自社内で完結さています。 大麦の生産に向かないと言われたアイラ島で50%の大麦を生産し、そのうち5%は有機農業を行い、この麦から蒸留されたウイスキーはオーガニックと名付けてボトリングされています。
基本的な酒質は、アイラ島では珍しく製造工程においてピートをほとんど炊いていない麦芽を使用しており、ピーティさがほとんどない仕込み水を使用するため、アイラ島のウイスキーとしては珍しくピートフレーバーがなく、モルティで芳醇な香り、甘味を感じます。
一方、ピートを使ったシリーズも生産しており、中でも限定の「オクトモア」シリーズはフェノール値がトップクラス(最大309ppm)という強烈なピートフレーバーが楽しめます。
ブルックラディブルーと呼ばれる鮮やかなターコイズブルーがトレードカラーで、ウイスキーづくりへのこだわりを感じるユニークな蒸留所となっています。
創業は1779年で、アイラ島では最古、スコットランド全蒸留所の中でも、ハイランドのグレンタレットに次ぐ2番目の古さです。
ボウモアの最大の特徴は、今でも伝統的なフロアモルティングを行っていることで、モルティングの全工程を蒸留所内で行っています。
使用するピート(泥炭)も所有する採掘場から切り出したもので、他で使用されるピートとは異なります。
ボウモアはアイラ島のウイスキーの中でも特有のピート香がそこまで強くなく、そのエレガントな風味とエリザベス2世とも関わり合いがあり、「アイラの女王」と称されています。
そのエレガントな風味はアイラ入門にはオススメな蒸留所です。
蒸留所紹介(C)
創業は1846年で1816年創業のラガヴーリンに次ぐアイラ島4番目の蒸留所です。
販売量世界一のブレンデッドウイスキー「ジョニーウォーカー」のキーモルトとして知られており、蒸留所内にはジョニーウォーカーのブランドマークであるストライディングマンの像があります。
生産量は年間650万リットルでアイラ島最大の生産能力を誇り、スコットランド全体でみても上位に入る大規模蒸留所です。
昔から生産された原酒の95%以上がブレンデッドウイスキー用の原酒として用いられていましたが、人気の高まりを受けて、現在は15%がシングルモルトに用いられています。
味わいについては、麦芽はラガヴーリン蒸留所と同じく、ポートエレン製のフェノール値34~38ppmの物を使用していますが、ピート感はしっかりあるもののラガヴーリンとに比べると軽やかな味わいです。
仕込み水にミネラル豊富な蒸留所近くのナムバン湖から引いた水を使うためか、出汁の様な味わいがあります。
ボトラーズから多くのリリースがあり、様々な味わいを見せてくれますが10年以下の比較的若いものでもカリラの特徴を味わえます。
クライドサイド蒸留所は、スコットランドの最大としてあるローランド地方のグラスゴーにあり、クライド川のほとりに2017年に建設された蒸留所です。
インディペンデントボトラー「ADラトレー」のオーナーであるティム・モリソンが、かつてウイスキー造りが盛んであったグラスゴーに蒸留所を建設する事を決めました。
ウイスキーに使われる仕込み水はグラスゴーから北に約60キロ離れたカトリン湖の水を使用しており、曾祖父であるジョンモリソンが グラスゴー市内の水道水の供給源となる貯水池とカトリン湖の創設に携わっていました。
原料となる大麦は全てローランド地方から調達され、発酵には比較的長めな約72時間をかけており、 蒸留回数は2回、熟成には高品質のファーストフィルバーボン樽をメインに、シェリー樽やリチャーしたバーボン樽を使用しています。
現在の年間生産能力は50万リットルと少ないですが、原料となる大麦と水に拘り、製造も丁寧に行っており、量よりも質を重視した蒸留所となっています。
基本的な酒質として、香りはフローラル、そしてフレッシュな甘みとトロピカルフルーツ、そして味わいはリンゴなど果樹園のフルーツ、そしてスパイス感があります。
リリース量は少ないですが、年に1回、カスクストレングスのボトリングもあり、人気を博しています。
蒸留所紹介(D)
ダフタウン蒸留所はスペイサイドのダフタウンにあり、ダフタウンは19世紀にファイフ侯であったダフが整備した町で、現在は6つの蒸留所があります。発音は「ダ」にアクセント来て、ダッタンに近い音です。
蒸留所は1895年に建設され、1896年に蒸留を開始、当時は「ダフタウン・グレンリヴェット」という名前で操業を始めました。
初めは、「ブレアアソール」を所有していた「マッケンジー&カンパニー」が所有していましたが、他の蒸留所同様、多くの買収を経て、現在はディアジオ社が所有しており、年間生産量は600万リットルと多く、そのほとんどが「ベル」等のブレンデッドウイスキーに用いられます。
オフィシャルリリースとしては、「シングルトン」と言う名称でアジア向けにダフタウンがリリースされており、その味わいは、ノンピートで、麦の香り、甘み、そしてオーク樽の熟成感を味わえる癖のない味わいです。
ボトラーリリースも多くない銘柄なので、中々飲む機会が無いかもしれませんが、見かけたら飲んでみるのはありだと思います。
ダルムナック蒸留所はスペイサイドのマレー地区にあり、複雑な歴史をたどり、2015年に新しく建設された蒸留所です。
蒸溜所近くにある、スペイ川の「Pool of Dalmunach」と呼ばれる淀みに付けられた名前から取られたもので、ゲール語で「丘の上の牧草地」を意味する「Dail a' Mhonaidh」が由来とされいます。
前身となる蒸留所は1998年に閉鎖された「インペリアル蒸留所」で、同じ敷地内に再建されており、その建設を監督したのは、シーバス・ブラザーズのプロダクション・ディレクターであったダグラス・クルックシャンク氏でした。
彼はかつてインペリアル蒸留所で働いた経験を持ち、かつての蒸留所の特徴を残すように蒸留所の建材を再利用したり、蒸留器は複製して再建をしました。年間生産量は1000万リットルを超える大規模蒸留所で、そのほとんどが親会社のペルノリカールがもつ「シーバス・リーガル」に使われている事は有名です。
シングルモルトのオフィシャルリリースは無く、ボトラーリリースで飲むことが出来ますが、数が少ないうえに様々なタイプが存在する為、基本的な味わいと言う所が表現できません。
もしも見かけたら飲んで戴き、香り・味わいを記憶・記録して頂ければと思います。
ディーンストンの語源については決定的なものはありません。
古くは紡績が盛んな地域で、歴史的な紡績工場であったところをモルト・ウイスキーの蒸溜所に改装した事で、外観からは蒸留所とは思えないレンガ造りの建物となっており、映画「天使の分け前」のロケにも使われた有名な蒸留所です。
改装した理由はこのような歴史的建築物は英国では取り壊せないためで、熟成庫は、温度・湿度を一定に保つ工夫がされており、エンジェルズシェアも2%を切っています。
水車により電力も自足自給しており、歴史的な産業遺産が見事に蘇った例として有名で、世界中から多くの観光客や視察団が訪れます。
自家発電と、原料となる大麦は化学肥料や農薬を使用しない環境に配慮した製法を取るこだわりで、製造工程もデジタルに頼らず、従来のアナログな手法を取っている中、蒸留所の生産能力は300万リットルと中規模であるのは職人たちの努力が感じ取れます。
オフィシャルで主にリリースされる、ヴァージン・オーク、12年、18年はそれぞれウイスキー品評会で多くの賞を受賞しています。
ハイランドでありながら、ローランドに近い為、ローランドのウイスキー作りの影響を受けておると言われており、基本の味わいはフレッシュで蜂蜜の様な甘さが特徴です。
オフィシャルのラインナップも多く、ボトラーズリリースもあり様々な味わいが楽しめる蒸留所です。
蒸留所紹介(G)
グレンアラヒーは、ゲール語で「岩の谷」を意味で、 1967年にスペイサイドのアベラワーの町の郊外に設立されました。
創業からブレンデッドウイスキーへの原酒供給をメインに行っており、シングルモルトとしては極めて希少な銘柄でした。
そんな中ウイスキー業界の中でも最も有名なプロデューサーの1人であるビリー・ウォーカー氏が、「グレンアラヒー」の可能性を見出し、2017年にグレンアラヒー蒸溜所は大手メーカー傘下から独立しました。
独立後は様々なカスク(樽)で後熟されたシングルモルトがリリースされ人気となっています。現在、400万リットルと言う中規模な製造量をもっており、基本的な酒質はスペイサイドとしては珍しくどっしりとしています。
その原酒を元にマクネアーズというブレンデッドモルトや、ピーテッドモルトを使用したミークルトールも人気を博しています
設立は1810年とされており、歴史のある蒸留所です。
2004年の改築以降、製造工程はコンピューター管理とされており、発酵槽やポットスチルの状態までもがモニターで確認できます。
年間生産能力は425万リットルで、スペイサイドの中でも中規模以上の大きさとなっていますが、 世界第2位の売上を誇るブレンデッドウイスキー「バランタイン」のキーモルトであり、ほぼ全てがバランタイン用の原酒に使用されている為、シングルモルトとしてはあまり知られていません。
味わいはフルーティかつ甘味があり、華やかさを特徴としたスペイサイドモルトらしい味わいです
近年は「バランタイン」のキーモルトシリーズで販売されており、人気を博しています。
創業は1826年で、ハイランドとスペイサイドの境界に位置するところに建てられました。
その為、スペイサイドモルトに分類される事もありますが、一般的にはハイランドモルトとされます。
2008年からは、全てのウイスキーをシェリー樽100%にするなど、シェリー樽熟成のエキスパートが造るウイスキーとして知られています。
味わいは、シェリー樽による甘く果実感のある風味と、ドライでナッティな香りによる芳醇なフレーバーが特徴です。
同じシェリー系のマッカランやグレンファークラスと比べるとややライトで飲みやすく、根強い人気を博すウイスキーです。
創業は1836年ですが、実際の稼働がもっと古かったと言われており、長年創業者一族が経営を行っています。
グレンファークラスの特徴は、ピートは一切焚かないノンピート麦芽での仕込むことで、 発酵時間も103時間と通常時間よりも長く、そして、今では珍しいガスバーナーによる直火炊き蒸溜に拘り、フルーティーな味わいです。
熟成樽はシェリー樽に拘り、「オロロソシェリー樽」を昔から契約しているスペインの生産者から購入しています。
カスクストレングスボトル(樽出し原酒)の先駆者であり、オフィシャルで105というラインナップがあります。
フルーティかつ甘味がありどっしりと濃厚な酒質です。
1887年にウィリアム・グラントがスペイサイド地方のダフタウンに創業し、世界で最も売れるシングルモルトの1つとして有名な蒸留所です。
1998年、5代目モルトマスターがシェリー酒造りで行われるソレラシステム(※)をウイスキーに応用するという革新的な試みを始めました。(グレンフィディック15年に使用)
スモーキーさはなく、味わいはシングルモルトらしいどっしりとしたモルト感で、チョコレートのような甘みを感じ、そしてフルーティです。
※ソレラシステムとは一番古い樽から原酒を半分程度取り出し、取り出した分だけ2番目の樽から継ぎ足す事で、常に熟成の進んだ原酒に新しい原酒を継ぎ足していく方法です。
この手法は酒質の安定化と円熟した味わいを生み出すと言われています。
周辺は大麦が豊富に育つ環境で、荒れた土地が何を意味するか不思議です。
創業は1797年と言われており、オーバン蒸留所に次ぐスコットランド6番目の蒸留所です。(1785年説もあり)
当時は村の名前からオールドメルドラム蒸留所と言う名前でしたが、グレンギリーと言う名前に変わりました。
生産量は少なく、元々はブレンデッドウイスキーのモルト原酒として提供されていたグレンギリーは、スコッチらしいピート香やスモーキーな風味を持っており、ジューシーな甘みと麦芽の香ばしさの後にピートが香るハイランドモルトとでした
時代が進むにつれて近隣の蒸溜所でもピートを炊いた原酒の製造を行うようになり、グレンギリー蒸溜所でのピート原酒の需要は次第に少なくなっていき、1994年にフロアモルティングが停止し、1995から1997年の閉鎖されてしまいました。
1998年の再開をきっかけにノンピートモルトに切り替え、現在のようなフルーティでクセのない飲みやすい風味となり、この頃からブレンデッド用モルトはなく、シングルモルト用に蒸溜を開始するようになり、生産量も増加しています
1982年当時、蒸留器の加熱に初めて北海油田から産出する天然ガスを採用し、さらに冷却水の余熱を利用して温室を作り出し、そこで農作物や花などを栽培したりするなど、時代を先取りしたエコスタイルを当時から実践している革新的な蒸留所でもあります。
2022年には蒸溜所の大幅改装が完了し、フロアー・モルティングと初溜釜の直火蒸溜を復活させており、その味わいに関心が集まっています。
創業は1843年でハイランド北部のロス州テイン町にある、モーレンジ醸造所と言う名のビール工場を改装して造られました。
近郊は良質の水とピートの産地として知られており、その水はウイスキーとしては珍しい硬水(ミネラル豊富な水)を使用しているため、イースト菌が糖を分解する力が促進されて発酵が非常に活発になると言われています。
蒸留器の特徴としては、ポットスチルの高さが5.14メートルと最高の部類で、蒸気となった重たいアルコール分は、長いポットスチルを登り切ることができないため、雑味が取り除かれてフルーティーでフローラルな成分だけが抽出され、複雑で神秘的味わいになります。
この5.14メートルは大人のキリンの背丈とほぼ同じ高さと言われていて、同社ブランドのシンボルの1つとなっており、企業としてキリンの保全活動をサポートしています。
また、樽に強いこだわりがあり、「追加熟成のパイオニア」や「樽のパイオニア」と呼ばれています。
熟成した原酒をシェリー樽などで後熟させる「ウッドフィニッシュ」という手法を導入したのも同社が初と言われ、またバーボン樽を初めて熟成に使用したのも同蒸留所と言われています。
基本の味わいは、若干のピートを使用しているがほぼ感じず、ライトで、フルーティな香り味わいです。
スタンダード品以外にも様々な限定シリーズも用意したりと、多くのファンがいる蒸留所になります。
ちなみに、1980年以降はボトラーズへのウイスキーの供給は行っていないと言われており、ボトラーズが入手できるシングルカスクはウイスキーソサエティ(※)のみとなっています。
(※)ウイスキーソサイエティとは
正式には「ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ」(略してSMWS)は、1983年にエディンバラの古い港町リースでウイスキー愛好者が集まり設立した、世界で最初のウイスキークラブで、様々なイベントや、独自にボトリングした製品があります。
創業は1897年で元々ビール工場があった場所に建てられましたが、13年後に閉鎖し、1923年にグレンモーレンジの第二蒸留所てして再稼働し、その後90年近く姉妹蒸留所として稼働していました。
現在は、製造量は500万リットルとスペイサイドでも大きい蒸留所となっており、フランスで人気のブレンデッド「ラベル5」や、「ハイランド・クイーン」の原酒として使われています。
大規模ですが、発酵時間を長くとる為にあえて生産量を落とすという拘りも見せています。
ブレンデッド需要に対応する為に熟成庫を新築するなど、ブレンデッドへの供給がメインでしたが、最近ではシングルモルトとしての人気も高くなってきており、オフィシャル12年を中心に熟成年数違いや、年数表記をしないクラシックシリーズの「ポートカスク」「シェリーカスク」「ピーテッド」「シャルドネ」「カベルネカスク」などがラインナップされており、樽の違いやピートによる違いを楽しめます。
味わいはバニラとベリーやシトラスの香りがバランスしており、スペイサイドモルトを代表する味わいで、その味を守る為に厳選されたアメリカンオーク樽で熟成されます。
グレンターナーと呼ばれるシングルモルトもリリースしており、こちらは前述の「ラベル5」のキーモルトに使用されているモルトウイスキーになっています。
コストパフォーマンスに優れ、様々なシリーズを送り出す、世界的にも評価の高い蒸留所です。
グレンロセス蒸留所はスペイサイド地方のロセス町近郊にあり、1878年に近くのマッカラン蒸溜所を経営していたJames Stuart & Coによって設立されました。
初めて蒸留が行われたのが1879年と言われていて、創業年が1879年と表記される事もあります。
創業から何度かの火災に見舞われる運命を辿り、1982年に現在の建物になったと言われています。
年間生産量は560万リットルと大きい方ですが、そのほとんどがブレンド用に生産されており、「カティーサーク」として知られ、現在はマッカランも所有するエドリントン社がオーナーであるため、同社の「フェイマスグラウス」のキーモルトとしても生産されています。
1993年より、シングルモルトのリリースも行っており、熟成年数でなくボトリング年を記載していた時期もありました。
2018年よりグレンロセスの新たなラインナップのソレオシリーズがリリースされており、ソレオとはシェリー酒に使用する「ぶどうの天日干しの工程」を指すため、その名の通り熟成にはシェリー樽が使われています。
基本的な酒質はすっきりとフルーティで飲みやすく、オレンジやメープルシロップ、はちみつ、そして後味はスパイシー感もあります。
オフィシャルのボトルは丸みを帯びており、非常に特徴的な可愛らしいボトルで目を引きます。
生産量は多くないですが、スタンダードの他にも様々な年数のカスクをブレンドしたヴィンテージシリーズなどがあります。
創業年は1775年と言われていて、スコットランド最古の蒸留所という風に主張していますが諸説ある様で、 密造酒を製造していた時代を含めると、1717年から存在している記録が残されている為、最古の蒸留所の一つであることは間違いなさそうです。
当時はサロット蒸溜所という名前で、1818年になると当時の町名からホッシュ蒸溜所となり、1875年に現在のグレンタレット蒸留所になりました。
グレンタレットと言えば、「ウイスキーキャット」の雌猫タウザーが有名です。
ウイスキーキャットは害虫駆除を行う猫の事で、多くの蒸留所で飼われていましたが、タウザーは「世界一ネズミを捕ったネコ」でギネスに登録されており、その生涯で捕獲したネズミの数「28,899匹」はウイスキー検定では定番の問題になっており、wikipediaにもページが存在します。
味わいはハイランド特有のオーツ麦によるクリーミーさとバニラ、柑橘系のさわやかな甘い香りがします。
原酒はブレンデッドウイスキーの「フェイマスグラウス」のキーモルトと使用されており、近年はシングルモルトにも力をいれており、その中でもピートを炊いた商品は「Ruadh Maor(ルーアックモア)」と表記します。